お子さんが不登校になったとき、「親として怒ってしまうのは仕方がないこと」と感じる方は少なくありません。
しかし、不登校の子どもに親が怒ることで、どのような影響があるのか、またそれが本当に問題解決につながるのか不安を抱えている方も多いはずです。
この記事では、不登校の子どもに親が怒ることで生じるさまざまなリスクや、親子関係への影響について分かりやすく解説します。
さらに、親が怒る以外にできる対応や、子どもの気持ちを尊重するコミュニケーションのヒントも紹介しますので、今後の関わり方を見直すきっかけにしてください。
不登校で親が怒るときに子どもへ与える影響

不登校の子どもに対して親が怒りをぶつけてしまうことは、思っている以上に子どもに大きな影響を及ぼします。
怒られることによる恐怖や不安は、子どもが家庭で心から安心できる場を失わせてしまうこともあるため、慎重な対応が求められます。
自己肯定感の低下
親が怒ることで、子どもは「自分はダメな存在なのかもしれない」と感じやすくなります。
否定され続けることで、自分に自信を持てなくなり、失敗を過度に恐れたり、挑戦する意欲がなくなったりする場合があります。
これにより長期的に自己肯定感が損なわれてしまい、その後の成長にも影響を及ぼします。
親子関係の悪化
怒られてばかりいると、子どもは親とのコミュニケーションを避けるようになります。
親子間の信頼が薄れ、会話やスキンシップが減少してしまうことも珍しくありません。
- 親子で相談しづらくなる
- 家庭内がピリピリした雰囲気になる
- 心の距離が広がってしまう
こういった状態が続くと、家族全体の雰囲気も悪化してしまいます。
子どもの本音の隠蔽
怒られることを恐れるあまり、子どもは自分の本音や困っていることを口に出せなくなります。
悩みや不安を打ち明けるきっかけを失い、親からの助けや理解も得にくくなってしまいます。
その結果、孤立感を深めることにもつながります。
家出・引きこもり・さらなる不登校への発展
怒りによるプレッシャーやストレスの蓄積は、子どもの逃げ場を奪いかねません。
無理に登校を迫ったり、強い言葉で叱責したりすると、逆に家出や引きこもり、不登校がさらに長引くといったリスクがあります。
親の対応 | 子どもの反応 |
---|---|
厳しく責める | 家出や逃避行動 |
無理やり登校させる | 体調不良の訴えや引きこもり |
無理強いはせず、子どもが安心できる環境をつくることが大切です。
罪悪感・無力感の増大
親に迷惑をかけてしまったと感じたり、自分は家族の負担になっていると捉えやすくなります。
このような罪悪感は、やる気や自己イメージの低下にも直結します。
「どうせ自分なんて何もできない」と、無力感が積み重なる場合も少なくありません。
ストレスや心身の不調
精神的なストレスが長引くことで、頭痛や腹痛、不眠など身体症状が現れることもあります。
また、強い不安や落ち込みが続き、心の健康にも影響を及ぼすことが考えられます。
これによって学校復帰を目指す意欲や体力がさらに損なわれる恐れもあるため、注意が必要です。
信頼できる大人への相談の減少
親から否定的な言葉を受け続けると、誰かに相談すること自体が怖くなってしまうことがあります。
大人への信頼感が低下し、問題をひとりで抱え込む傾向が強くなります。
これは将来的な人間関係や社会参加にも悪影響を及ぼす可能性があります。
親が不登校の子どもに怒る理由

不登校の子どもを抱える親が、どうして怒ってしまうのかは一概には言えません。
しかし、多くのご家庭で共通する背景や心理があります。
それぞれの理由を紐解くことで、親の気持ちや不安を知るきっかけになります。
将来への不安
親は子どもの未来をいつも心配しています。
とくに学校へ行かないことで、勉強が遅れるのではないか、社会から遅れてしまうのではないかなど、多くの不安が頭をよぎります。
「このまま社会でやっていけるのか」「将来困ることにならないか」と心配になるほど、感情が先走ってしまい、思わず怒ってしまうことも少なくありません。
- 勉強の遅れや将来の進学に対する不安
- 友人関係や社会性への心配
- 子どもがこの状況から抜け出せるのかという焦り
親自身も、どうしたらよいか分からず、不安から強く子どもに当たってしまうケースが多く見られます。
他者からの視線や世間体
周囲の人たちの目や、世間体を気にしてしまうこともまた、親が怒ってしまう大きな理由です。
学校の先生や親戚、ご近所からの言葉や態度がプレッシャーとなり、それがストレスとして親にのしかかります。
気になる相手 | 感じやすいプレッシャー |
---|---|
ママ友・ご近所 | 噂や評価が気になる |
親戚 | 「育て方が悪い」と言われる不安 |
学校関係者 | 理解してもらえないことへの焦り |
「普通の家庭」「ちゃんとした親」というイメージを他人に持たれたいという心理が働き、本人も気付かないうちに子どもに怒ってしまうことがあります。
自分の価値観や育児観との葛藤
親自身が持っている「育児はこうあるべき」「学校は必ず行くもの」という価値観が、現実と合わないとき、大きな葛藤が生まれます。
今まで信じてきた考え方が通用しなくなると、不安や自責の念、無力感を感じがちです。
そのしんどさが余裕のなさにつながり、思い通りにならない子どもに対して怒りの感情が出てしまうのです。
また自分自身の経験や親世代から受けた教育観も影響し、「自分の子育ては間違っているのでは」と悩むこともあります。
不登校の子どもに親が怒ってしまった場合のリスク

不登校になった子どもに対して親が感情的に怒ってしまうことは、思わぬリスクを引き起こす場合があります。
親自身もつらい思いを抱えていることは少なくありませんが、怒りによって子どもの心には深い影響が残ることがあります。
ここでは、親が怒ることによる主なリスクについて具体的に見ていきます。
再登校意欲の喪失
子どもは親に怒られることで「学校に行かなければいけない」とプレッシャーを感じがちです。
その一方で、「自分はダメなんだ」と自信を失い、再び学校へ行こうとする意欲をなくしてしまうこともあります。
- 失敗を責められたと感じる
- 努力しても認めてもらえないと思いこむ
- 否定的な気持ちが増していく
こうした理由から、親の怒りは子どもの再登校に向かう気持ちを弱めてしまうリスクが高いといえます。
精神的ストレスの長期化
怒りをぶつけられることで、子どもの心には大きなストレスがかかります。
もともと不登校は精神的な負担や不安が背景にある場合が多いですが、さらにストレスが重なることで、解決までの時間が延びてしまうことも少なくありません。
親の対応 | 子どもの影響 |
---|---|
怒りをぶつける | 不安や緊張が増す |
受け止めて寄り添う | 心が落ち着きやすくなる |
このように、親の対応次第で子どものストレスの度合いも大きく変わります。
親からの孤立感
親に怒られてばかりいると、子どもは「どうせ自分の気持ちはわかってもらえない」と感じるようになります。
その結果、親子の会話が減ったり、本音を隠すようになったりと、親から心が離れて孤立してしまうこともあります。
孤立感が強まると、子どもの心の傷は深くなり、人に助けを求めるのが難しくなる場合も考えられます。
親が怒る以外に取るべき不登校対応のポイント

子どもが不登校になると、親として焦りや不安からつい怒ってしまいがちです。
しかし、怒ることは子どもの心をさらに追い詰めてしまうケースも多々見られます。
適切な対応を心がけることで、子どもが再び自信を持てるようになる土壌を整えていきましょう。
ここでは、怒る以外に親が取るべき具体的な対応ポイントを紹介します。
子どもの気持ちを受け止める姿勢
まず大切なのは、子どもの気持ちや立場に寄り添うことです。
子どもが不登校になった理由は本人にしかわからないことが多く、大人の価値観を押し付けると逆効果になることがあります。
しっかり「話を聞く」「共感する」「否定しない」という態度が大事です。
- 子どもの話には耳を傾け、途中で口を挟まないよう心がけましょう。
- 悩みや不安を受け止め、「どんな気持ちだったの?」と柔らかく尋ねるのも効果的です。
- 「また学校に行きなさい」と責めるより、「つらかったね」と共感しましょう。
このように子どもの気持ちや意思を尊重することで、子どもも安心して自己開示しやすくなります。
安心できる家庭環境の維持
不登校の子どもにとって、家庭は心の拠り所となる場所です。
家庭内がピリピリした雰囲気だったり、親が子どもの将来を過度に悲観したりしていると、子どもはますます居場所を失ってしまいます。
家庭内では、できるだけ穏やかな雰囲気を保ち、子どもが安心して自分を出せる環境を用意しましょう。
家庭で心がけたいポイント | 具体例 |
---|---|
責めない対応 | 「どうして行けないの?」と問い詰めない |
日々の会話を大切に | 共通の話題や趣味について話す |
規則正しい生活習慣 | 寝起きや食事のリズムを一緒に意識する |
小さな成功を見つけて褒める | 「今日は起きられてえらいね」などと声掛けする |
親自身もストレスをためこまず、リラックスした時間や会話を持つことが大切です。
外部支援への相談
不登校の対応は、家庭だけで抱え込まず、外部の力も積極的に利用しましょう。
たとえば、学校のスクールカウンセラーや地域の相談窓口、医療機関、フリースクールなどがあります。
外部支援につながることで、親も子どもも必要なアドバイスやサポートを受けられます。
- 学校の先生やカウンセラーとの相談
- 子育て支援センターや児童相談所の利用
- フリースクールやオンライン学習の検討
- 親の会や当事者団体への参加
- 医療機関や専門家への相談
どこに相談するか迷った場合は、まずは身近な学校や市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。
さまざまな支援先があることを知っておくと、親も孤立せずに済みます。
怒る以外のコミュニケーション方法

不登校の子どもに向き合うとき、つい怒ってしまいがちですが、他にもたくさんのコミュニケーション方法があります。
親が怒りの感情を手放し、子どもと信頼関係を築くためには、子どもへの寄り添い方や話し方がとても大切です。
ここでは、怒る以外のアプローチとして重要な三つの方法を紹介します。
傾聴の姿勢
傾聴とは、子どもの話をよく聞き、理解しようとする姿勢のことです。
子どもが何を感じ、何を考えているのかを否定せず受け取ることで、子どもは自分の気持ちを素直に話しやすくなります。
- 相槌やうなずきで関心を示す
- 話の途中で遮らない
- 子どもの話を最後まで聞く
傾聴の基本を実践することで、子どもが安心して心を開くきっかけになります。
共感的な対話
共感的な対話は、子どもの気持ちに寄り添い、理解を示すことを大切にしたコミュニケーションです。
子どもが抱える不安やつらさをそのまま受け止め、価値観や考えを認めます。
共感的な対話のポイントを以下の表にまとめました。
ポイント | 具体例 |
---|---|
気持ちを言葉にする | 「そうなんだ、学校に行くのがつらいんだね」 |
子どもの目線に立つ | 「私も同じ立場だったら不安になると思うよ」 |
解決より共感を重視 | 「無理に頑張らなくていいよ」 |
共感の気持ちが伝わると、子どもは自分の気持ちを受け入れてもらえたと感じ、心が軽くなります。
無条件の受容
無条件の受容とは、子どもがどんな状態でも否定せず、そのまま受け入れるという姿勢です。
「学校に行かなくてもあなたは大切な存在だよ」と伝えることが、子どもの心の安定につながります。
子どもは、失敗や弱さを見せても愛される存在であるという安心感が持てるようになります。
怒るかわりに、ありのままの子どもを受け入れる親の姿勢が、回復への大きな支えとなります。
親が怒る状況で子どもに現れやすいサイン

親が怒る場面が続くと、子どもたちはさまざまな形で心のSOSを発信することがあります。
子ども自身もうまく言葉にできない気持ちを、行動や体調の変化として表すことが多く、そのサインを見逃さないことが大切です。
無気力や無表情
子どもが突然以前のような明るさを失い、無気力や無表情になってしまうことがあります。
家庭内で怒りが頻発すると、子どもは自分の気持ちを抑え込みやすくなり、感情表現が乏しくなる場合があります。
次のような特徴が見られることが多いです。
- 大好きだった趣味や遊びにも興味を示さない
- 学校の出来事や友達の話をしなくなる
- 笑顔が減り、表情が固くなる
このようなサインが現れた場合は、無理に元気づけるよりも、まずは子どもの気持ちを受け止めて見守ることが大切です。
体調不良の訴え
親が怒る状況が続くと、子どもは気づかないうちに強いストレスを感じています。
このストレスが原因で、身体的な不調を訴えるケースも少なくありません。
主な体調不良 | 現れやすいタイミング |
---|---|
頭痛 | 登校前、家庭不和時 |
腹痛 | 朝や学校へ行く直前 |
食欲不振 | 親が怒った後、食事の時間 |
眠れない/寝つきが悪い | 就寝前や翌日が学校の日 |
もしも繰り返し体調不良を訴える場合は、単なる身体の不調だけでなく、心のケアが必要かどうかも注意深く観察してみてください。
会話の拒否や回避行動
親が怒ったり強く責めたりすることで、子どもは身を守るために会話自体を避けるようになることがあります。
この場合、親と顔を合わせることを避けたり、自室に閉じこもるなどの行動につながります。
子どもが無理に話そうとしない時は、しばらくそっとしておくことも信頼関係を築くうえで大切です。
子どもが拒否や回避行動を取る背景には、自分の気持ちを分かってもらえない、否定されたくないという心の声が隠れている場合があります。
親自身が気をつけるべき感情のコントロール

不登校の子どもを持つと、親としての不安や焦りから、つい感情的に怒ってしまうことがあります。
しかし、親の怒りは子どもにとって大きなストレスとなり、親子関係に悪影響を及ぼすこともあります。
親自身が感情のコントロールに気を配ることで、お互いにとってよりよい関係を築くことができるようになります。
ここでは、親ができる感情コントロールの具体的な方法を紹介します。
深呼吸や時間をおく工夫
イライラや怒りを感じたときは、まずその場で深呼吸をしてみましょう。
呼吸をゆっくりと整えることで、気持ちも落ち着きます。
すぐに言葉を発するのではなく、少しだけ時間をおくことも一つの方法です。
- ゆっくりと3回深呼吸する
- 一度席を外して気持ちをリセットする
- 冷たい水を一杯飲んで落ち着く
- 数分間、目を閉じて静かに過ごす
このようなシンプルな工夫を積み重ねることで、怒りの感情をコントロールしやすくなります。
自分の気持ちの振り返り
自分がなぜ怒りを感じているのか、じっくりと振り返ってみることも大切です。
子ども自身に問題があるのではなく、親の不安や期待が原因となっていることもあります。
気持ちの整理の例を表にまとめました。
親の感じること | 振り返りのポイント |
---|---|
子どもが学校に行かないことへの不安 | 「自分がどうしたいのか?」を自問する |
将来への心配 | 「今この瞬間に注目しよう」と切り替える |
自分が責められているように感じる | 他人と比べずに自分自身の状況に目を向ける |
このように一度立ち止まって自己理解を深めることで、感情的になる回数を減らせます。
第三者への相談
どうしても一人で感情を抱えきれないときは、無理をせず第三者に相談することも重要です。
家族や親しい友人以外にも、専門の相談窓口やサポート団体を活用しましょう。
第三者に話すことで気持ちが整理され、新たな視点が得られることもあります。
また、同じ悩みを持つ親同士で情報交換や共感をし合うことも、大きな心の支えになります。
自分だけで抱え込まず、人に頼ることで心の余裕を持つことができます。
今後の関わり方で大切にしたい姿勢

不登校の子どもと向き合う親は、日々さまざまな不安や戸惑いを感じるものです。
時には感情的になってしまい、怒ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、今後の関わり方で大切にしたいのは、子どもの気持ちに寄り添い、安心できる居場所をつくっていく姿勢です。
まず、親自身が焦りを感じすぎず、小さな変化や成長にも目を向けてあげることが大切です。
子どもが自分の気持ちを打ち明けられるように、日々の会話の中で優しく声をかける習慣を持ちましょう。
また、親が自分自身のストレスもケアしながら、心に余裕を持ち続けることも重要です。
時には家族みんなで相談したり、専門家や相談機関の力を借りたりするのも有効な方法です。
「こうあるべき」「こうしなければいけない」と子どもに押し付けるのではなく、今の子どもの気持ちやペースを大切にし、長い目で見守る気持ちが、よい関係を築いていくポイントとなります。
悩みをひとりで抱え込まず、親自身もサポートを受けながら、共に乗り越えていく姿勢を持ち続けましょう。