不登校の子どもが病院に行くことを嫌がる場面に直面し、戸惑いや不安を感じている親御さんも少なくありません。
「どうして受診を拒むのだろう」「無理に連れていくべきなのか」と悩む気持ちは、多くの家庭で共通する大きな課題です。
この記事では、不登校の子どもが病院を嫌がる理由を理解しながら、親として実践できる具体的な対応策や心がまえ、活用できる相談先についてわかりやすく解説します。
初めて向き合うケースでも安心できるように、親子の信頼関係を築くためのヒントや自宅でできる工夫もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
不登校の子どもが病院を嫌がるときに親ができる具体的な対応策

不登校の子どもが病院に行くことを嫌がる場合、親としてどのような行動が望ましいのか悩む方は多いです。
子どもの気持ちに寄り添いながら、適切なステップを踏むことが大切です。
家族の協力や周囲の支援を得ながら、無理せず進めていく方法を知ることで、不安が軽減されます。
受診を嫌がる子どもの気持ちへの理解
不登校の子どもが病院を嫌がる背景にはさまざまな理由があります。
知らない場所で緊張してしまう、医師に自分のことを話すのが不安、体調や気分が優れず外出自体がしんどいなど、複数の要素が複雑に絡み合っています。
また、自分の悩みを「大げさ」「迷惑」と感じてしまい、受診自体を負担に思うケースも少なくありません。
まずは子どもの気持ちを否定せず、「どうして行きたくないのか」理由をやさしく聞いてあげましょう。
無理に連れていくリスク
子どもを無理やり病院へ連れて行くと、親子の信頼関係が損なわれたり、病院や医療行為そのものに嫌悪感を持ってしまうことがあります。
不登校の心の問題をさらに複雑にする場合もあり、症状が悪化したり、今後のサポートを拒否する原因にもなり得ます。
子どもの意思やペースを尊重することが、長期的な支援の第一歩となります。
- 病院に強い抵抗を感じている
- 外出自体が困難な状態である
- 説得によって親への信頼が薄れる
- 症状が悪化もしくは長期化する
親子間の信頼関係の築き方
子どもが心を開ける環境を作ることがとても大切です。
親が「ちゃんと向き合ってくれている」と子どもが感じることで、少しずつ安心して本音を打ち明けやすくなります。
普段から子どもの話を最後まで聞いたり、否定的な言葉を避けることが役立ちます。
「病院へ絶対行きなさい」と命令するのではなく、「どう思う?」「何が不安かな?」と子ども自身の考えに寄り添う姿勢を持ちましょう。
親の対応 | 子どもの反応 |
---|---|
話を最後まで落ち着いて聞く | 安心して本音を伝えやすい |
意見を頭ごなしに否定する | 気持ちを閉ざす・反発する |
一緒にどうしたいか考える | 主体的に動く意欲が生まれる |
家でできる初期対応
家でまずできることは、子どもの不安や悩みにじっくり耳を傾けることです。
また、規則正しい生活リズムを意識し、無理のない範囲で体調を整えることも重要です。
子どもがリラックスできるような環境を作ったり、好きなことに取り組む時間を設けて気分を落ち着けることもおすすめです。
食事や睡眠の質を上げることも、間接的に心身の安定につながります。
子ども本人への受診理由の伝え方
受診が必要な理由については、子どもの年齢や理解度に合わせてシンプルかつ具体的に伝えましょう。
「病院は怖いところではないこと」「つらさや困りごとを医師が一緒に考えてくれること」を丁寧に説明します。
「元気になって好きなことができるようになるため」など、前向きな目的を伝えることも大事です。
一方的に決めつけず、「一緒に相談しに行こう」という共感の姿勢が、子どもの気持ちを和らげます。
親が相談できるサポート機関
親のみで抱え込まず、外部のサポートも利用しましょう。
不登校の悩みに対応できる機関として、以下の場所が身近です。
- 学校のスクールカウンセラー
- 児童相談所
- 自治体の教育相談室
- NPO法人やフリースクール
- 精神科・心療内科・小児科などの医療機関
相談することで親自身の心の負担も軽減され、具体的なアドバイスを得ることができます。
代理受診の活用方法
どうしても子どもが受診を拒む場合、親だけが病院で相談する「代理受診」という方法があります。
代理受診では、子どもの現状や困りごとを医師に伝え、専門的なアドバイスを受けることができます。
特に初診前の情報整理や、緊急性の有無の判断にも役立ちます。
医療機関によっては、代理受診の対応ができるかどうか異なる場合もあるので、事前に電話などで確認しておくと安心です。
不登校と病院受診を拒否する主な理由

不登校の子どもが病院受診を嫌がる場面には、さまざまな理由や背景があります。
単なる「サボり」や「わがまま」ではなく、心の中で複雑な思いを抱えていることが多いです。
子どもの気持ちや状況に寄り添いながら、理由ごとに把握しておくことが大切です。
病院に対する恐怖心
多くの子どもは病院独特の雰囲気に不安を感じやすいものです。
待合室の静けさや消毒液のにおい、白衣の先生などが恐怖心をあおることがあります。
既に過去に病院で嫌な経験をしている場合、その記憶から再度の受診を強く嫌がることも考えられます。
- 注射や採血など、痛みを伴う処置への恐怖
- 知らない先生と話すことへの不安
- 病院に自分が“連れて行かれる”という受け身の気持ち
このような感情が積み重なると、病院を「怖い場所」として拒否するようになるのです。
診断や薬への不安
不登校の子どもは、「何か重大な病気と診断されるのではないか」といった恐れを持つ場合があります。
また、精神科や心療内科であれば、「心の病気」だと判定されることへの拒否感が強いことも特徴です。
処方される薬に対して、以下のような不安を抱くケースも見受けられます。
不安の内容 | 具体例 |
---|---|
薬の副作用 | 体調が悪くなるのでは、と心配する |
治療が長引く不安 | 「一度薬を飲んだらやめられないかも」と思う |
自分が「病気」と認められる恐怖 | 周囲に知られるのではと心配する |
このようなイメージにより、病院での診断や治療に強い抵抗感を持つ子も少なくありません。
自分の問題だと感じたくない気持ち
不登校の理由はさまざまですが、ときに「自分が悪い」「自分が問題」と思いたくない気持ちが現れます。
病院に行くこと自体が、「自分のせいで問題が起きている」という認識を強めてしまうことがあります。
そのため、以下のような心情が生まれやすいです。
- 認めたくない現実から目をそらしたい
- 自分を守るため病院を拒否する
- 「病院=問題がある証」というイメージを持ってしまう
このような心理から、病院受診を頑なに拒む場合も見られます。
親や周囲への抵抗感
近しい人への反発心や反抗心が、病院受診を拒否するかたちで表れることもあります。
たとえば、親から「病院に行こう」と繰り返し言われることで、自分の意志を守ろうとする気持ちが強まることがあります。
また、周囲の大人の期待や心配に対し、下記のような感情を抱く場合もあります。
感情 | 具体的な例 |
---|---|
「わかってくれない」と思う | 親や先生にイライラする |
自分のペースを守りたい | 病院は自分でタイミングを決めたい |
このような抵抗感が、結果として病院へ行きたくない気持ちにつながっています。
不登校の子ども向けの病院・医療機関の種類

不登校で悩む子どもや保護者は、どのような医療機関を受診すればよいのか分からず、不安を感じることも少なくありません。
実際には子ども一人ひとりの状況や悩みに応じて、選ぶべき病院や相談先が変わることがあります。
ここでは不登校の子どもに適した病院や医療機関の種類について紹介します。
心療内科
心療内科は、心と体の不調が関連して現れる場合に受診する診療科です。
不登校の背景には「おなかが痛くなる」「朝になると頭痛がする」など、身体症状が現れることも多いです。
こうした心身の不調が重なるとき、心療内科では身体と心を総合的にサポートできるのが特徴です。
家から出るのがつらかったり、病院に行くこと自体を嫌がる子にも、無理に通院を強いる必要はありません。
まずは保護者だけでも相談してみることで、適切な対応につながることがあります。
- 身体症状と心の悩みが同時にある
- 初めての受診でどの科を選べば良いか迷っている
- 体調不良で学校を休みがちな場合
児童精神科
児童精神科は、子どもの心の問題を専門に扱う診療科です。
不登校の背景に、いじめ、不安、うつ、家族関係など複雑な心理的要因がある場合は、児童精神科の受診が適しています。
特に思春期のお子さんの場合、言葉にしきれない気持ちを理解してくれる専門医師が在籍している施設もあります。
下記に心療内科と児童精神科の主な違いをまとめます。
科名 | 対象年齢 | 特徴 |
---|---|---|
心療内科 | 全年齢 | 体の不調と心の不調を一緒に診る |
児童精神科 | おもに18歳未満 | 子どもの心の課題に特化している |
発達外来
発達外来は、発達障害や発達の偏りが疑われる子どもを診察する診療科です。
自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などが不登校の背景として存在することもあります。
発達外来では、子どもの特性を理解した上で、適切なサポートや環境調整についてアドバイスを受けることが可能です。
診断だけでなく、学校や家庭での対応方法についても相談できます。
「どうしても集団生活が苦手」「こだわりが強い」などの特徴を感じた場合は、一度相談を検討してみてください。
公的相談機関・クリニック
公的相談機関やクリニックは、自治体やNPOなどが運営している相談窓口です。
医療機関よりも敷居が低く、学校への復帰や家庭での対応アドバイス、専門機関との連携支援を受けることができます。
子ども自身だけでなく、保護者も一緒に悩みを相談できる場所が多いのが特徴です。
公的相談機関・クリニックでは、地域の子ども家庭支援センターや教育相談室、子ども支援NPOなどがあります。
病院を嫌がる場合の受診以外の相談・サポート先

不登校の子どもが病院に行くことを強く嫌がる場合、無理に受診させようとするとかえって心の負担が大きくなってしまうことがあります。
そんな時は、病院以外にも相談できる場所やサポートを受けられる機関がいくつかあります。
子どもの状況や気持ちに配慮しながら、それぞれのサポート機関を活用して少しずつ前向きに進めることも大切です。
学校のカウンセラーやスクールソーシャルワーカー
通っている学校には、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されている場合があります。
これらの専門家は、保護者や子ども自身からの相談を受け付け、不登校の背景や悩みごとについて話を聞いてくれます。
学校内で面談ができることが多く、普段の環境で気軽に相談できるのが特徴です。
また、不登校への対応経験があるため、具体的なアドバイスや今後の支援策についても相談に乗ってくれます。
利用方法には以下のようなものがあります。
- 担任の先生や学年主任に相談し、カウンセラーの面談予約をとる
- 学校から配布されるサポート案内を確認して直接連絡する
- 保護者だけでの相談も受け付けてもらえるケースが多い
地域の子ども支援センター
地域には市区町村が運営する子ども支援センターや教育相談室があります。
そこでは、不登校や子育て全般の悩みについて、専門のスタッフが対応しています。
医療機関ではないため、病院に行くことを嫌がる子どもや保護者も気軽に利用しやすいです。
電話や窓口での相談が可能なほか、必要に応じて家庭訪問や学校との連携も行われることがあります。
代表的な子ども支援センターの特徴を表にまとめました。
名称 | 主な相談内容 | 相談方法 |
---|---|---|
子ども家庭支援センター | 不登校・いじめ・家族関係など | 電話/来所/訪問 |
教育相談室 | 進路・学業・学校生活 | 来所/学校連携 |
オンライン相談サービス
近年はネットの普及とともに、オンラインでカウンセラーや専門家に相談できるサービスも増えています。
自宅にいながら、匿名で悩みを打ち明けられるため、対面の相談がハードルに感じる場合にも利用しやすいです。
主に以下のようなサービスが用意されています。
- 自治体の公式チャット相談窓口
- NPOや子ども支援団体によるLINE相談
- 電話やメール、ビデオ通話を利用できる民間のオンラインカウンセリング
これらのサービスは24時間対応や、予約不要なことも多いので、急に相談したいときにも役立ちます。
子ども自身が直接相談しても良いですし、保護者も一緒に活用できます。
親が孤立しないために意識したいセルフケア

不登校のお子さんを持つ親が孤立してしまうことは少なくありません。
周囲に相談しにくかったり、自分自身を責めてしまったりすることもあります。
しかし、親が心身ともに健康でいることは、子どもへの支援にもつながります。
まずは自分自身を大切にし、無理をしないことを意識しましょう。
ストレス対処の方法
不登校という状況は親御さんにとっても大きなストレスとなります。
ストレスを溜め込まないためにも、日常生活の中で気持ちをリセットする方法を取り入れることが大切です。
- 自分の趣味に時間を使う
- 少しだけ外に出てリフレッシュする
- 美味しいものを食べて気分転換する
- ゆったりとお風呂に入る
また、気持ちを紙に書き出すだけでも心が落ち着くことがあります。
自分に合ったストレス解消法を見つけることが、セルフケアの第一歩です。
家族のサポート体制
家族全体でお子さんを支えるためには、家族間でのコミュニケーションが重要です。
家族が協力し合うことで、親の負担やプレッシャーも分散できます。
家族協力のポイント | 期待できる効果 |
---|---|
お互いの気持ちを共有する | 不安や孤立感の解消 |
家事や育児の分担 | 負担の軽減・余裕の創出 |
定期的な話し合いの場を設ける | トラブルの早期発見・共通認識の形成 |
家族で小さなことでも助け合い、話し合う時間をつくりましょう。
同じ経験を持つ親との交流
「自分だけが悩んでいる」と感じてしまうと、さらに孤立感が強まります。
同じような経験をしている親と交流することで、共感や新しい視点が得られます。
インターネットの掲示板やSNS、地域の親の会など、参加できる場を探してみましょう。
無理に話さなくても、他の人の体験談を聞くだけでも気持ちが楽になったり、参考になったりすることがあります。
「相談してみてもいいかな」と思える場所を見つけるのも、大切なセルフケアのひとつです。
不登校の子どもが病院を嫌がるときに大切にしたい視点

ここまで不登校のお子さんへの対応についてさまざまな視点でご紹介してきましたが、最も大切なことはお子さん自身の気持ちに寄り添うことです。
「病院に行こう」と何度も繰り返してしまうと、お子さんはより一層プレッシャーを感じたり、不安が大きくなってしまったりする場合があります。
保護者が焦る気持ちは自然なものですが、お子さんが安心できる環境や雰囲気を整えることが、問題解決につながる大きな一歩となります。
お子さんの「嫌」という気持ちを否定せず、一度しっかり受け止めることで、徐々に心を開いてくれる可能性も高まります。
必要であれば、学校や専門機関と相談しながら、ご自身も無理をし過ぎないことが大切です。
ご家庭ごと、お子さんごとにベストな対応策は異なりますので、今回ご紹介したポイントを参考に、少しずつ歩み寄ってみてください。
お子さんとご家族みんなが、少しでも穏やかな気持ちで過ごせる毎日となることを願っています。