思春期には心と体が大きく成長し、親子ともにさまざまな悩みや戸惑いを抱えることが少なくありません。
特に、思春期のホルモンバランスの変化がきっかけとなり、不登校につながるケースは意外に多く、見過ごされがちな一因です。
この記事では、ホルモンバランスの乱れがどのように不登校に影響するのか、その症状や要因、家庭や専門機関での具体的なサポート方法までわかりやすく解説します。
「なぜ突然、子どもが学校に行けなくなってしまったのか」と悩む保護者の方に寄り添い、少しでも解決の糸口を見つけていただくためのヒントをお届けします。
思春期のホルモンバランス変化が不登校に与える影響

思春期は心身の大きな変化が起こる時期であり、ホルモンバランスが急激に変動します。
この変化は身体だけでなく、心にも多様な影響を与え、不登校の一因になることがあります。
ここでは、思春期特有のホルモンバランスの変化が、どのように不登校と関係しているのかを解説します。
自律神経の乱れ
ホルモンバランスの変化により、自律神経の働きが乱れやすくなります。
自律神経は体温調節や睡眠、消化などの機能をコントロールしています。
乱れると「だるさ」や「頭痛」、「食欲不振」などの症状があらわれ、学校生活に支障をきたしやすくなります。
こうした体調不良は、結果的に学校へ足が向かなくなる原因となることがあります。
起立性調節障害
起立性調節障害は、思春期に多い自律神経のトラブルとしてよく知られています。
朝起きるのがつらい、立ち上がるとめまいや立ちくらみを起こすなどの症状が目立ちます。
- 朝起床時に強い眠気を感じる
- 立ったときに気分が悪くなる
- 頭痛や動悸がすることが多い
- 午前中に集中できない
このような症状は学校に通う意欲を低下させ、不登校につながることが少なくありません。
気分の落ち込み・うつ症状
ホルモンの影響で気分が不安定になりやすいのも思春期の特徴です。
ちょっとしたことで落ち込みやすくなったり、何もやる気が起きない状態になることもあります。
下記の表は気分の落ち込みとうつ症状の違いの例を示しています。
気分の落ち込み | うつ症状 |
---|---|
一時的な憂うつ感 | 長期間続く無気力・疲労感 |
趣味に興味を持てる | 何にも興味が持てなくなる |
休息や気晴らしで回復 | 休んでも回復しない |
深刻なうつ症状になると、登校どころか日常生活さえ困難になる場合もあります。
体調不良による朝の不調
思春期のホルモンバランスの乱れが原因で、朝になると頭痛やだるさなど体調不良が現れることがあります。
特に朝の早い時間は症状が強く、学校に行くこと自体が難しくなる生徒もいます。
このような体調不良は、本人の意思ではどうにもならないことも多く、無理に登校を促すことが逆効果になる場合があります。
集中力の低下
ホルモン変動や睡眠リズムの乱れにより、勉強への集中力が低下しやすくなります。
授業についていけなくなったり、成績が下がることで、自信を失ってしまう子どももいます。
その結果、学校が苦痛な場所に感じられ、不登校のきっかけにつながることがあります。
不安感・イライラの増加
思春期特有のホルモンバランスの変化は、心の安定にも影響します。
理由もなく不安に駆られたり、ちょっとしたことでイライラしやすくなることがあります。
このような状態が続くことで、人間関係のトラブルや学校生活のストレスにつながることも多いです。
周囲とのコミュニケーションがうまくいかず、結果的に不登校に発展してしまうケースもあります。
女子特有のホルモン影響(月経、PMSなど)
女子の場合、月経サイクルやPMS(月経前症候群)によるホルモンの影響が大きくなります。
PMSでは以下のような症状がよく見られます。
- 情緒不安定
- 強い眠気
- 頭痛や腹痛
- 集中力の低下
これらの症状がひどい場合、学校生活が非常に困難になりやすく、不登校の要因になってしまうケースもあります。
月経時の体調不良や気分の波も、本人を苦しめる大きな理由となることが多いです。
思春期の不登校発生の主な要因

思春期は心も体も大きく成長する大切な時期ですが、さまざまな要因が重なり合うことで不登校につながってしまうことがあります。
ここでは、主な発生要因について詳しく見ていきます。
ホルモンバランスの乱れ
思春期はホルモンの分泌が急激に変化する時期です。
ホルモンバランスが不安定になることで、情緒が不安定になったり、気分の浮き沈みが激しくなったりします。
このような心身の変化に自分自身でも戸惑ってしまい、登校への意欲が低下する場合もあります。
また、些細なことでイライラしたり、学校生活にストレスを感じやすくなったりすることもあります。
こうしたホルモンバランスの乱れは、本人の努力だけではコントロールしづらい特徴があります。
学業や進路のプレッシャー
進級や受験、進路選択など、思春期は学業面でのプレッシャーが増える時期です。
期待や不安、失敗への恐れなどが重なることで、「学校に行きたくない」と感じてしまう子どもも少なくありません。
- テストや成績を気にしすぎて、ストレスを感じることがある
- 親や先生からの期待が重荷になる場合がある
- 自分の進路が見えにくく、不安を感じることがある
このような精神的なプレッシャーは、知らず知らずのうちに子どもの負担となり、不登校のきっかけになることがあります。
人間関係の変化とストレス
思春期になると、友達関係やクラス内での立場など人間関係が複雑になっていきます。
仲間外れやいじめ、グループ内でのトラブルなど、周囲との関わりで強いストレスを感じやすい時期です。
主な人間関係のストレス要因 | 具体例 |
---|---|
いじめや仲間外れ | 陰口を言われる、一人になることが増える |
グループ内のトラブル | 友人同士のけんか、派閥ができる |
親子関係の変化 | 反抗期になり、親とぶつかる |
これらの人間関係による悩みが、不登校の引き金になることも少なくありません。
インターネット・SNSの影響
スマートフォンやパソコンの普及により、子どもたちの環境は大きく変化しています。
インターネットやSNSでは、気軽に情報がやりとりできる一方で、トラブルや誹謗中傷に巻き込まれるリスクも増えています。
オンライン上での人間関係の悩みや、SNSでの比較による自己肯定感の低下も、不登校につながる原因のひとつです。
また、夜遅くまでネットやSNSに夢中になり、生活リズムが乱れることで、朝起きられずに学校を休むことが続くケースもあります。
ホルモンバランスの乱れによる不登校の症状

思春期は体の成長とともにホルモンバランスが大きく変化する時期です。
この変化は心と体のさまざまな不調につながりやすく、不登校の一因となる場合があります。
以下に、ホルモンバランスの乱れが関係しやすい不登校の代表的な症状を紹介します。
慢性的な倦怠感
ホルモンバランスの乱れは、体のエネルギー代謝に影響を与えることがあります。
そのため、特別な理由がなくてもだるさや疲れを強く感じるようになり、学校へ行く気力が出ないことも珍しくありません。
無理に登校しようとしても体が思うように動かず、登校が負担になってしまうケースが多いです。
- 朝起き上がるのがつらい
- 日中も何となく元気が出ない
- 家でゴロゴロしてしまうことが増える
頭痛・めまい
思春期にホルモンバランスが崩れると、自律神経も乱れやすくなります。
これにより頭痛やめまいなどの身体症状が起こりやすくなり、登校が困難になることもあります。
症状 | 感じるタイミング |
---|---|
頭痛 | 朝の支度時や授業中に多い |
めまい | 立ち上がった時や活動を始めた時 |
これらの症状は本人も理由がわからず苦しむ場合が多く、理解を得にくいことも特徴です。
食欲の変化
ホルモンバランスが乱れると、食欲にも変化が現れやすくなります。
急に食べ過ぎてしまったり、逆にまったく食欲が湧かなくなってしまうこともあります。
このような食欲の変動は栄養バランスを乱し、体調悪化や情緒の不安定さにつながる場合があります。
睡眠リズムの乱れ
思春期のホルモン変動は睡眠にも大きく影響します。
夜なかなか寝付けなかったり、朝起きられなくなったりすることが増えます。
この睡眠リズムの乱れが登校の妨げとなり、不登校へとつながることも少なくありません。
睡眠不足が続くと体調不良も悪化しやすく、日々の生活にも大きな影響を与えます。
思春期のホルモンバランス変化による不登校への対応策

思春期は心と体の成長が著しい時期で、ホルモンバランスの変化が学校生活や人間関係に影響を与えることがあります。
ホルモンの影響で気分が不安定になりがちで、結果として不登校に悩むお子さんも少なくありません。
ご家庭でできる対応策や適切なサポート方法を知っておくことは、お子さんを支えるうえでとても大切です。
生活リズムの安定
規則正しい生活は、ホルモンバランスを整えるための第一歩です。
毎日決まった時間に起きることや、夜はしっかりと睡眠をとることが心身の安定につながります。
また、休日でもリズムを大きく崩さないよう心がけましょう。
生活リズムの調整は倦怠感や気分の落ち込みを防ぐのにとても有効です。
適度な運動習慣
適度な運動はストレスを軽減し、ホルモンの分泌を整える働きがあります。
次の中から、お子さんが無理なく取り組める運動を選んでみましょう。
- 近所を散歩する
- ヨガやストレッチをする
- 友達や家族とキャッチボールやバドミントンを楽しむ
- 自宅でダンスやフィットネス動画に挑戦する
できることから少しずつ始めて、気持ちよく体を動かす時間を持つことが大切です。
食事による体調管理
バランスの良い食事は、ホルモンバランスや心の健康を保つのに大切な役割を果たします。
主食・主菜・副菜を意識して、様々な栄養素をまんべんなく摂りましょう。
下記の表は、思春期の健康維持のために意識したい栄養素と含まれる代表的な食品です。
栄養素 | 代表的な食品 | 主なはたらき |
---|---|---|
たんぱく質 | 肉・魚・卵・大豆製品 | 体や脳の発達をサポート |
鉄分 | レバー・ひじき・ほうれん草 | 貧血予防や集中力維持 |
ビタミンB群 | 豚肉・納豆・玄米 | エネルギー代謝や神経機能の維持 |
食事の偏りや極端なダイエットには注意し、日々の体調チェックにも目を向けましょう。
専門機関への相談
不登校が長期化したり、ご家庭だけでは対応が難しいと感じた時は、早めに専門機関へ相談しましょう。
カウンセラーや医療機関、学校の相談室など、様々な支援があります。
専門家のアドバイスを受けることで、適切な対応方法や必要なサポートが見つかることも多いです。
お子さん自身も安心できるような相談相手を一緒に探してみるのも良いでしょう。
家族のサポート
家族が温かく見守る姿勢は、お子さんにとって大きな安心につながります。
無理に学校へ行かせることよりも、心の内をしっかり聞くことが大切です。
「こうしなければいけない」と決めつけず、お子さんのペースを尊重しましょう。
一緒に目標や小さな達成感を共有することで、自信回復や不安の軽減に役立ちます。
家庭でできる思春期の不登校サポート方法

思春期はホルモンバランスの変化から心身に大きな影響が出やすく、不登校になるお子さんも少なくありません。
家庭で安心できる環境を整え、無理のないサポートを心がけることが大切です。
子どもが自信を取り戻し、少しずつ前向きに過ごせるよう家族の協力が必要です。
子どもの話を受け止める姿勢
子ども自身が自分の気持ちや悩みを話せる場を作ることが重要です。
無理にアドバイスをしようとせず、まずは耳を傾けて、子どもの言葉に共感しましょう。
親が否定したり急いで解決策を提示するよりも、「そうなんだね」「つらかったね」と気持ちを受け止める姿勢が信頼関係を育みます。
NGな対応 | おすすめの対応 |
---|---|
「そんなことで悩んでたの?」と軽んじる | 「あなたの気持ち、大切にしたいよ」と伝える |
すぐに原因を追及する | 無理に聞き出そうとせず待つ |
無理に登校を促さない対応
子どもが学校へ行けない理由はさまざまで、本人にも説明しきれないことがあります。
「明日は絶対に学校に行きなさい」と強く言いすぎると、子どもの心にプレッシャーをかけてしまいます。
まずは生活リズムや体調を整えていくことを優先しましょう。
- 焦らず子どものペースに合わせる
- 家でもできる学習や趣味を見つける
- 学校や専門機関と連携する
子ども本人の意志を尊重しつつ、必要に応じて学校や相談機関への連絡も積極的に行うようにしましょう。
小さな生活目標の設定
すぐに学校に戻るのではなく、小さな目標から始めていくことで自信と達成感を養えます。
例えば毎朝決まった時間に起きる、短い時間だけ家の外に出てみる、親子で一緒に簡単な家事に取り組むなど、家庭環境に合わせた目標を設定しましょう。
達成できたときはしっかり褒めてあげることが大切です。
少しずつステップアップすることで、「自分にもできた」という実感が生まれ、前向きな気持ちにつながります。
悩んだときの相談先と支援の受け方

思春期はホルモンバランスの変化により、心や体にさまざまな不調が現れやすい時期です。
不登校などの問題が生じた際には、一人で悩まず、信頼できる相談先に早めに相談することが大切です。
ここでは、代表的な相談先と、どのように支援を受けられるかについて紹介します。
学校カウンセラー
学校にはスクールカウンセラーが配置されていることが多く、児童・生徒や保護者が気軽に相談できる場となっています。
思春期特有の心身の悩みや不登校の理由について、一緒に整理したり、解決策を考えるサポートをしてくれます。
カウンセリングの利用方法は次の通りです。
- 学校の職員室や受付などでカウンセラー面談の予約をする
- 担任や養護教諭を通じて面談希望を伝える
- 親だけで相談を始めることも可能
カウンセラーは秘密を守ってくれるので、安心して悩みを打ち明けることができます。
医療機関(小児科・心療内科)
ホルモンバランスの乱れが疑われる場合や、心身の不調が続く場合、医療機関の受診も一つの選択肢です。
特に、小児科や心療内科の専門医は、思春期の発達や精神的な問題に対する豊富な知識を持っています。
医療機関 | 相談内容例 | 特徴 |
---|---|---|
小児科 | 体の不調やホルモンバランスの質問 | 子ども特有の問題に対応 |
心療内科 | 不眠や不安感、学校への不適応 | 心身の総合的な診断・治療 |
医療機関を受診する際は、学校や家族からの情報、具体的な症状などを整理して伝えるとスムーズです。
自治体や支援団体
自治体や民間の支援団体でも、不登校や思春期の悩みに応じた相談窓口が用意されています。
地域の教育相談室や児童相談所、NPO法人など多様な支援が受けられます。
例えば、自治体の相談室では次のようなサポートがあります。
- 電話やメール、対面での相談対応
- 進学や復学に向けたアドバイス
- 家庭訪問や登校支援サービスの紹介
身近な支援先がわからない場合は、お住まいの市区町村役場や学校で紹介してもらうこともできます。
一人で悩まず、安心できる場所や人を見つけて支援を受けましょう。
思春期のホルモンバランスと不登校の関係を理解し前向きに支えるために

思春期は心身の大きな変化が訪れ、本人にとっても家族にとっても戸惑いが多い時期です。
この時期はホルモンバランスが大きく変化しやすく、気分や行動の不安定さが目立つこともあります。
それにより、これまで当たり前にできていたことが急に難しく感じたり、学校生活に不安を抱えやすくなることも少なくありません。
不登校の背景には、決して本人の意思の弱さや怠けがあるわけではなく、体と心の成長過程でさまざまなストレスが重なることも関係しています。
家族や周囲の大人がこの事実を理解し、思春期特有のホルモンバランスの影響も踏まえて接することで、お子さまは前向きな気持ちを持ちやすくなります。
焦らず、寄り添いながらお子さまのペースに合わせてサポートしていくことが大切です。