発達障害をもつお子さまが、注射を強く嫌がる場面に直面し、どう対応したらいいのか悩んでいませんか。
感覚過敏や予測できない状況への不安、強い痛みへの恐怖など、発達障害の子どもが注射に対して抵抗を示す理由はさまざまです。
この記事では、発達障害の子どもが注射を嫌がるときに役立つ具体的な対応方法やサポートグッズ、その際に大切にしたい配慮ポイントを分かりやすくご紹介します。
お子さまと保護者双方の負担が少しでも軽くなるためのヒントを、これから詳しくお伝えします。
発達障害の子どもが注射を嫌がるときの具体的な対応方法

発達障害の子どもが注射を嫌がる場合、無理に受けさせようとするとさらなる恐怖やパニックにつながることがあります。
子どもの特性や苦手な理由を理解したうえで、適切な対応やサポートが重要です。
安心できる環境作りや、本人に合った方法で気持ちを落ち着かせる工夫が必要となります。
感覚過敏による注射の苦痛
発達障害の子どもは、皮膚への刺激や痛み、音やにおいといった感覚に敏感なことが多いです。
そのため、注射の針が刺さる瞬間の痛みや、消毒のアルコールのにおいなどが強いストレスとなり、嫌がる原因になることがあります。
具体的には、触覚や痛覚に強い反応を示す場合、ちょっとした刺激でも恐怖心やパニックに発展することがあります。
感覚過敏による苦痛を理解し、苦手な刺激を和らげる工夫が大切です。
予測できない状況への不安
発達障害の子どもは、状況の変化や予測できない出来事に強い不安を感じることがよくあります。
注射がいつ始まるのか、どのような手順で行われるのかが分からないと、不安感が増して抵抗することがあります。
注射の順番を待つ間に不安で泣き出してしまう子もいます。
- 事前に注射の流れを写真やイラストで説明する
- 注射を打つタイミングを時計やタイマーで伝える
- 事前に何回くらい待つのか知らせておく
このように見通しを持てるよう工夫すると、不安の軽減につながります。
注射前の準備と伝え方
注射を受ける前には、子どもが安心できるような準備が重要です。
言葉での説明だけでなく、視覚的なサポートも取り入れると理解しやすくなります。
やり方 | メリット |
---|---|
絵本やイラストで事前説明 | 流れがイメージしやすくなる |
おもちゃやぬいぐるみで練習 | 実際の行動を体験できる |
簡単な質問で確認 | 理解できているかを把握できる |
子どもの分かる言葉で、注射がなぜ必要なのかも伝えるとよいでしょう。
注射中のサポート方法
注射の最中は、怖い気持ちを和らげてあげるサポートが効果的です。
保護者がそばにいて声をかけたり、手を握ったりするだけでも安心感が生まれます。
好きな音楽を聞かせたり、お気に入りのぬいぐるみを持たせる方法もあります。
名前を呼び続けたり、深呼吸を一緒に行うことで、恐怖心を軽減できます。
医療スタッフと事前に連携し、子どもの様子に合わせた対応をしてもらうことも大切です。
注射後のフォローやご褒美
注射が終わった後は、しっかりと頑張れたことを認めてあげましょう。
シールやちいさなお菓子など、ご褒美があると「次も頑張ろう」という気持ちになりやすいです。
「頑張ったね」「怖かったけどできたね」と具体的に声をかけ、成功体験を積み重ねていくことが大切です。
フォローの方法を続けていくことで、徐々に注射への抵抗が減っていきます。
医療機関への相談タイミング
自宅での工夫やサポートだけではうまくいかない場合や、激しくパニック状態になるときは、早めに医療機関へ相談しましょう。
医師や看護師に発達障害であることや、注射がどれほど苦手かを伝えることで、特別な対応や配慮をしてもらえることがあります。
とくに予防接種や定期的な注射が必要な時期は、医療機関の協力を仰ぎつつ、安全に注射ができるようにしていくことが重要です。
発達障害の子どもが注射を嫌がる主な原因

発達障害の子どもが注射を強く嫌がる場面は少なくありません。
その背景には、感覚の敏感さや見通しの立てづらさなど、さまざまな特性が関係しています。
また、過去の経験から抱く恐怖心も影響していることがあります。
それぞれの原因を知ることで、子どもへの適切な対応を考える手助けになります。
感覚刺激への過敏さ
発達障害の子どもは、皮膚への感覚や触れられることに対してとても敏感な場合があります。
注射の針が肌に触れる刺激や、アルコール消毒のひんやりとした感覚だけでも強いストレスを感じることがあります。
また、待合室や診察室などのにおいや音、照明といった周囲の環境刺激にも敏感で、不安や混乱がさらに高まる要因になります。
- 針の感触がどうしても我慢できない
- 消毒液のにおいが苦手
- 周囲のざわざわした音に圧倒されてしまう
これらの刺激による強い不快感が、注射を嫌がる原因となっています。
不安や見通しの立たなさ
発達障害の子どもは、何が起きるのか先が読めないと強い不安を感じることが多いです。
注射の手順やどれくらい痛いのか、終わるまでどれだけ時間がかかるのかなどが分からないと、気持ちが不安定になりやすくなります。
特に初めての体験や、前回痛い思いをした記憶がある場合は、その不安がさらに大きくなります。
原因 | 主な影響 |
---|---|
先が見えない | 不安や混乱が増す |
経験不足 | 恐怖心が強くなる |
説明が不足 | パニックが起こりやすくなる |
事前に流れや理由を伝えることが、とても大切になります。
痛みに対する強い恐怖
注射による痛みを人一倍強く感じる場合や、「痛み」に対して強い恐怖心を持っている子どもも多いです。
過去に注射でとても痛かった経験がトラウマになっていることもあります。
注射=怖い、痛いというイメージが強いため、少しの痛みでも極端な反応を示すことがあります。
また、泣いてしまったり、動いてしまったりするのを自分でコントロールしきれず、さらに恐怖が強まる悪循環に陥ることもあります。
子どもの気持ちを理解し、安全に安心して注射できる工夫が必要です。
注射を嫌がる発達障害の子どもへのサポートグッズ

発達障害の子どもが注射を受けることに強い不安や恐怖を感じることは少なくありません。
そんなときに活用できるサポートグッズにはさまざまな種類があり、子ども一人ひとりの特性に合わせて選ぶことが大切です。
ここでは注射を嫌がる子どものサポートに役立つグッズについて紹介します。
視覚サポートカード
視覚サポートカードは、注射の手順や流れをイラストや写真でわかりやすく示したカードです。
発達障害の子どもの中には言葉だけの説明ではイメージしにくい子もいるため、視覚的な情報を使うことで安心感が高まります。
病院に行く前や待合室でカードを一緒に見ながら、どんな順番で何が行われるのかを確認しましょう。
- 注射前に手を消毒する場面
- 看護師さんがやさしく声掛けしてくれる場面
- 注射が終わってほっとした様子
これらの場面をカードで見せながら説明することで、子どもは次に起こることを予測でき、不安が和らぐ場合があります。
ぬいぐるみやお気に入りアイテム
子どもが大好きなぬいぐるみやタオルなど、お気に入りのアイテムを持参することで、安心感を得られます。
ぬいぐるみと一緒に「いっしょに頑張ろう」と声をかけたり、好きなグッズを手に握らせたりすることでストレスを軽減できることもあります。
アイテム | 期待できる効果 |
---|---|
ぬいぐるみ | 安心感・心のよりどころ |
ハンカチやタオル | 感触で気持ちを落ち着かせる |
小さなおもちゃ | 注意をそらしやすい |
慣れたグッズがあると、注射のときだけでなく待ち時間の不安を和らげる効果もあります。
医療用麻酔シール
痛みが特に苦手な子どもには、医療機関で処方される麻酔シールの利用が効果的です。
このシールを事前に貼ることで針を刺す瞬間の痛みを軽減できます。
利用する場合は医師や看護師に相談し、適切な使い方や貼るタイミングを確認しましょう。
子ども本人にも「このシールを貼ると痛くなりにくいよ」と伝えることで、注射への不安が軽減される場合があります。
注射時のトラブルとその対処法

発達障害のあるお子さんや大人の方が、注射の場面で強く嫌がることや、パニックになってしまうことは少なくありません。
こうしたトラブル時には、本人の気持ちを尊重しつつ、安全かつスムーズに対応することが大切です。
ここでは、パニック時に落ち着かせる方法や、安心して注射が受けられるようなサポート法、どうしても注射を拒否してしまう場合の対応についてご紹介します。
パニック時の落ち着かせ方
注射を前にして強い不安や恐怖からパニック状態になることがあります。
まずは、本人が安心できる声かけやスキンシップを行い、無理に制止したり叱ったりしないようにしましょう。
本人が好きなアイテムや、気をそらせるグッズ(お気に入りのぬいぐるみやおもちゃなど)を使うのも効果的です。
深呼吸を一緒にしてみたり、静かな音楽をかけたりすることで、緊張を和らげることができます。
- 具体的な手順を事前に説明し、見通しを持たせる
- 「今は泣いても大丈夫」「怖いのは当たり前」と受け入れの姿勢を伝える
- 短い言葉で優しく伝える
パニック時は本人が安心できる環境をつくることがとても大切です。
安全な身体のサポート方法
注射の際、暴れてしまったり、体を動かしてしまったりする場合は、転倒やけがの危険もあります。
そのため、身体のサポートが必要になることもありますが、無理やり押さえつけるのではなく、安心感を与えながら行います。
下の表は、よく使われる身体サポートの方法の一例です。
方法 | ポイント |
---|---|
膝の上で抱きかかえる | 保護者やスタッフが正面から優しく抱くことで安定する |
後ろから包み込む | 背中を支え、腕が動かないように軽く包む |
タオル等で手を包む | 手足が動かないようにソフトに包み込む |
本人が納得したうえで、できるだけストレスを減らす工夫をしましょう。
注射を断固拒否する場合の対応
どうしても注射を拒否する場合は、無理強いせず、納得のいくタイミングを待つこともひとつの方法です。
医療機関には、発達障害のある方への理解や経験が豊富なスタッフがいる場合もあるので、事前に相談するのがおすすめです。
また、以下のような対応方法も参考にしてください。
- 注射の目的や必要性を分かりやすい言葉や絵カードで説明する
- 予告なしに急がず、事前に時間をかけて心の準備をしてもらう
- 薬の種類によっては飲み薬や点鼻薬など、異なる投与方法を検討する
可能であれば、本人が一番落ち着く人に付き添ってもらい、一緒に対処することも安心感につながります。
その日の注射が難しい場合は延期し、別の日に改めてトライする方法もあります。
保護者や周囲が意識したい配慮ポイント

発達障害のある子どもが注射を嫌がる場面では、本人の特性や不安に寄り添った配慮が求められます。
無理やり押さえつけたり、周囲の目を気にして焦ってしまうと、子ども自身のストレスや恐怖心が強くなってしまう場合があります。
そこで、保護者や周囲の大人が意識しておきたい具体的な対応ポイントについて紹介します。
叱らず安心感を優先する
注射を怖がったり嫌がったりすることは、小さな子どもでも大人でも自然な反応です。
発達障害のある子どもの場合、その感覚がとても敏感で、想像以上に不安や恐怖を感じていることがあります。
このような時に「我慢しなさい」「いい加減にして」などと叱るのは逆効果です。
叱るのではなく、まずは「怖いんだね」「大丈夫だよ」と子どもの気持ちを受け止め、安心できる雰囲気を作ることが大切です。
例えば、親がそっと手を握る、好きなぬいぐるみを持たせるなど、子どもに合った安心材料を一緒に見つけてみましょう。
- 静かな場所に移動してみる
- 慣れた看護師さんにお願いする
- 事前に注射のイメージを共有する
本人のペースを尊重する
注射までの流れや準備においても、本人の納得したペースで進めていくことが大切です。
「あと何分で順番だよ」とタイムラインを示したり、手順を具体的に説明したりすることで、不安を軽減できます。
急かされると余計に不安が高まるため、準備の時間や心理的な区切りを意識しましょう。
配慮できるポイント | 例 |
---|---|
タイムラインを示す | 「10分後に呼ばれるよ」と伝える |
手順を可視化する | 絵カードやイラストで説明する |
間に休憩をはさむ | 待機室でリラックスタイムをとる |
肯定的な声かけ
子どもが少しでも頑張る姿勢を見せた時は、「よく我慢してるね」「できたね!」と肯定的に声をかけて励ましてあげましょう。
たとえば泣いてしまっても、「泣いてもいいよ」「怖いのにがんばったね」と気持ちや行動を認める言葉かけが大切です。
成功体験が重なっていくことで、少しずつ注射への恐怖も和らいでいく可能性があります。
言葉だけでなく、子どもが安心できるスキンシップや笑顔など非言語的なサポートも効果的です。
発達障害の子どもの注射対応で知っておくと役立つこと

これまで発達障害の子どもが注射を嫌がる場面についてお伝えしてきました。
発達障害の特性がある子どもにとって、注射は想像以上に不安や恐怖を感じやすいものです。
保護者や医療スタッフが子どもの気持ちに寄り添い、できるだけ負担を軽減してあげることがとても大切です。
注射の前にしっかりと説明したり、安心できる環境を整えたり、小さな成功体験を積み重ねていくことが、子どもの自己肯定感にもつながります。
焦ることなく、子どものペースに合わせた対応を心がけていきましょう。
今回ご紹介した方法が、ご家庭や医療現場で少しでも役立てば幸いです。