自閉症のお子さんが、絵本をめくることに夢中になる姿を見て「どう接すればいいのだろう」「この行動にはどんな意味があるのだろう」と、悩んだ経験はありませんか。
自閉症の特性から生じる絵本との関わり方には、独自の理由や楽しみ方がありますが、その理解やサポート方法が分からず戸惑うことも多いものです。
この記事では、自閉症の子どもが絵本のページをめくる行動について、その特徴や対応のポイント、おすすめの絵本・遊び方まで丁寧に解説します。
お子さんと絵本時間をもっと楽しみ、発達を支えるヒントをぜひ見つけてください。
自閉症の子どもが絵本をめくる行動の特徴と接し方

自閉症の子どもが絵本をめくる行動には、一人ひとりの特性や個性が色濃く表れます。
特徴を理解し、その子らしい楽しみ方を尊重することが大切です。
具体的な接し方を知ることで、親や周囲の大人の不安の軽減や、より豊かなコミュニケーションにつながるでしょう。
感覚刺激への敏感さ
自閉症の子どもは感覚に対して敏感であったり、逆に鈍感であったりすることがあります。
絵本の紙の手触りやページをめくる音、インクのにおいなど、五感に伝わる刺激に反応しやすい傾向があります。
これらの刺激が心地よく、めくること自体が楽しい経験になることも多いです。
一方で、特定の紙質や音が苦手な場合もあるため、子どもの反応をよく観察して絵本を選ぶとよいでしょう。
ページをめくる楽しさ
自閉症の子どもにとって、ページをめくるという行為自体が遊びや心地良い刺激となることがあります。
単純な繰り返し動作が安心感や達成感につながるため、絵本を読むというよりも、ページをめくることが目的になる場合も珍しくありません。
- パラパラとめくる動作を好む
- 同じリズムで何度も繰り返す
- めくる枚数や順番にこだわりが出る
大人はその様子を見守りつつ、絵本を自由に扱える環境づくりを心がけましょう。
お気に入りのページへのこだわり
自閉症の子どもは、一部のページや絵柄に強い興味を持つことがあります。
そのページだけを何度もめくったり、止まったりする行動が見られることもよくあります。
行動例 | 考えられる理由 |
---|---|
特定のページばかりめくる | 好きなキャラクターや色があるため |
お気に入りのページで止まる | 安心感や達成感を感じるため |
同じページを繰り返す | 予測できる展開が心地よいから |
このようなこだわりも、その子ならではの豊かな感性の現れとして受け止めましょう。
マネややりとりの意欲
絵本をめくる大人の動きをじっと見つめたり、同じ動きを真似てみたりすることもあります。
「やってみたい」という気持ちや、大人と同じことをしたいという意欲が芽生えているサインです。
最初はゆっくりと一緒にページをめくる体験を重ね、できた時にはたくさん褒めてあげましょう。
マネする力がついてくると、やりとりやコミュニケーションにも発展しやすくなります。
コミュニケーションのきっかけとしての絵本
言葉が少ない時期や、会話が苦手な子どもでも、絵本を通じて気持ちのやりとりが生まれやすくなります。
例えば、子どもがめくったページを大人が指さして共感したり、簡単な言葉を添えたりするだけでも十分なコミュニケーションになります。
子どもの興味や行動に寄り添って、大人が無理に読み聞かせようとするよりも、自由に楽しむことを大切にしましょう。
無理な制止・強制への注意点
子どもがページをどんどんめくる姿を見て「ちゃんと読まないと…」と制止したくなることもあるかもしれません。
ですが、無理に動きを止めたり、絵本の正しい読み方を強制することは逆効果となる場合があります。
大切なのは、子どものペースや楽しみ方を尊重することです。
安心して絵本と関われるよう、温かく見守る姿勢を持ちましょう。
自閉症の子が繰り返しめくりたくなるおすすめ絵本

自閉症の子どもたちは、自分のお気に入りの絵本を何度もめくることがあります。
その際、好みに合った絵本を選ぶことで、より安心して楽しむことができ、興味や集中力の向上にもつながります。
めくる体験そのものが心地よい刺激になる絵本にはさまざまなタイプがあります。
ここでは、繰り返しめくる楽しさを感じやすいおすすめの絵本をご紹介します。
しかけ絵本
しかけ絵本は、ページをめくるたびに驚きや発見があるため、自閉症の子が繰り返し触れるのにぴったりです。
ひっぱったり、くるくる回したり、窓を開けたりと、多彩なしかけが手指の動きを促します。
- 「いないいないばあ」などの簡単なしかけ
- 動物や乗り物が隠れているタイプ
- 穴が開いていたり立体的なパーツがあるもの
自分で動かすことができるしかけは、達成感や驚きにつながります。
特に、頑丈な素材で作られている絵本は、何度でも繰り返し楽しめるので安心です。
シンプルなイラストの絵本
飾りすぎていないシンプルなイラストは、視覚的な情報が多くなりすぎず、自閉症の子どもにもわかりやすいのが特徴です。
背景がごちゃごちゃしていない、大きなキャラクターや身近なものが描かれている絵本がおすすめです。
タイトル | 特徴 |
---|---|
だるまさんが | 大きなイラストと簡単な言葉 |
がたんごとん がたんごとん | 動きのある乗り物とシンプル構図 |
くだもの | 実物に近い果物の絵 |
このような絵本は、ページをめくるごとに次は何が出てくるのかというワクワク感も感じられます。
音やリズムが楽しめる絵本
音の出る絵本や、言葉のリズムが楽しい絵本は、繰り返しめくるたびに耳でも楽しめます。
「ぽんぽん」「ころころ」など、心地よい擬音語がたくさん使われた絵本や、ボタンを押すと音が鳴る絵本は特に人気です。
ページをめくる動作と音やリズムが連動することで、集中力が持続しやすくなります。
親子で一緒に声を出して読んだり、鳴る音に合わせて体を動かしたりすることも楽しい時間につながります。
感触を楽しめる絵本
触って楽しむ絵本は、触覚の刺激を心地よく感じる子におすすめです。
ふわふわ、ざらざら、つるつるなど、ページごとに異なる素材を使った絵本もあり、めくるたびに新しい驚きや安心感が得られます。
指でなでたり引っ張ったりできる部分がある絵本は、安心して集中するきっかけになります。
手指を使うことで指先の感覚も養われ、めくる作業自体が楽しみになります。
自閉症の子と絵本をめくる時間を楽しむコツ

自閉症の子どもと絵本をめくる時間は、成長や心のつながりを育む大切なひとときです。
子ども一人ひとりの特性に合ったサポートや関わり方によって、絵本を楽しむ幅がぐんと広がります。
些細なことにも挑戦や工夫を楽しみながら、親子でかけがえのない時間を過ごしましょう。
子どものペースに合わせる
自閉症の子どもは、興味の示し方や絵本への関わり方が個性的です。
ゆっくりページをめくる子もいれば、同じページを何度も見たがる子もいます。
子どもの好奇心や集中力のリズムに合わせて、無理にページを進めたり読むことを強制したりしないようにしましょう。
- 子どもが自分でページをめくりたがるときは見守る
- 途中で立ち止まってじっくりイラストを眺める時間を大切にする
- 「もう一度読んで」とリクエストされたら何度でも応じる
柔軟な気持ちで子どものペースを尊重することで、よりリラックスして絵本を楽しめます。
絵本の見方を否定しない
自閉症の特性によっては、ストーリーを順番通りに追っていくのではなく、好きなページだけを繰り返し見たり、絵や文字の一部だけに集中したりする場合があります。
こうした見方も、その子の大切な興味や楽しみ方なので、否定せず受け止めましょう。
子どもの行動 | 対応のコツ |
---|---|
同じページばかり見る | 焦らず子どもの関心に寄り添う |
ページを何度も戻す・進める | 流れを大事にせず楽しむことを優先する |
イラストの一部をじっと見る | その部分について声をかけて共感する |
子どもが自由に絵本と関われる環境を用意することで、自分ならではの楽しみ方を発見できます。
一緒にめくる体験を大切にする
自閉症の子どもにとって、大人と一緒に絵本をめくることは安心感や信頼関係を深めるきっかけになります。
手を添えてページをめくったり、「いっしょにめくろうね」と声をかけたりしながら、絵本の世界を共有してみましょう。
ふれあいやコミュニケーションの時間を通して、子どもの反応に共感し、楽しさを分かち合うことが大切です。
また、「どのページにしようか」「ここが気になる?」など、会話を楽しむことも良い刺激になります。
一緒にめくる体験を重ねることで、親子の距離がぐっと近づきます。
自閉症児の絵本タイムに活用できる遊びアイデア

自閉症のお子さまとの絵本タイムは、ただ読むだけでなく、遊びを取り入れることでさらに楽しい時間になります。
遊びを通じてページをめくる動作や指さしなど、自然な成長をサポートすることができます。
ここでは、日常の絵本タイムにすぐに取り入れられる遊びアイデアをご紹介します。
ページめくり競争
絵本を読みながら、親子やきょうだいで「どちらが早くページをめくれるかな?」と競争する遊びです。
競争と言っても、タイムを計ったり順番に交代したりと、無理のない範囲で楽しみましょう。
自閉症の子どもにとって、「ページをめくる」という細かい動作は、手先の発達や集中力にも良い影響を与えます。
- 「よーい、スタート!」の合図でめくる
- どちらがきれいにめくれるか比べる
- 大好きなページでストップしてみる
競争の後は「上手にできたね」と一緒に褒め合うのも良いでしょう。
お気に入りのページ当て
この遊びは「どのページが一番好き?」と問いかけて、子どもが自分で選んだページを当てるものです。
コミュニケーションのきっかけや、子どもの好きなものを知る手段にもなります。
遊び方 | 効果 |
---|---|
好きなページをめくってもらう | 自主性や自己表現の促進 |
親が「ここかな?」と予想する | 親子のコミュニケーション強化 |
理由を聞いてみる | 言語表現や感情表現の練習 |
子どもの興味や変化を発見しやすくなる点もおすすめポイントです。
絵本に合わせて指さし遊び
ページをめくるごとに「ここはなにかな?」「どこに犬がいるかな?」などと質問して、絵本の中のイラストを一緒に指さして探してみましょう。
指さしは自閉症のお子さまがコミュニケーションを深めたり、注目する力を育んだりするのに役立つ大切な動きです。
「一緒にやってみよう」の声かけや、子どもがためらう場合は親が手を添えてあげるのも良いでしょう。
いろいろなキャラクターや色、形を指さして遊ぶことで、少しずつ語彙や認識力もアップしていきます。
慣れてきたら、「今度は〇〇を探してみよう」などお題を変えて発展させることも可能です。
絵本と一緒に発達を支えるアイテム

自閉症のお子さまにとって、絵本をめくる体験は発達を促す大切な時間です。
その時間をより楽しく、効果的にサポートしてくれるアイテムを組み合わせることで、お子さまの集中力や興味をより引き出すことができます。
ここでは、絵本と一緒に使いやすいサポートアイテムについて紹介します。
音声付き知育玩具
音声付き知育玩具は、ボタンを押すと効果音や声、音楽が流れるアイテムです。
絵本のストーリーやキャラクターに関連する音声知育玩具を使えば、ページをめくるたびに新しい発見があり、お子さまの好奇心を刺激します。
とくに自閉症のお子さまは、視覚だけでなく聴覚からも刺激を受けることで、物語への理解が深まりやすくなります。
下記は、絵本と一緒に使えるおすすめの音声付き知育玩具の例です。
- 絵本のキャラクターが話しかけてくれるタッチ式ボード
- 動物や乗り物の音が流れる効果音パッド
- 音楽や歌が流れる絵本型玩具
タッチペン付き絵本
タッチペン付き絵本は、専用のペンで絵本の絵や文字をタッチすると音声や説明が流れるアイテムです。
自閉症のお子さまは、視覚と聴覚を同時に使うことで内容が記憶に残りやすく、ページをめくる習慣が楽しくなります。
自分でタッチすることで主体的な学びができ、コミュニケーションの練習にもつながります。
人気のタッチペン付き絵本の特徴を下の表にまとめました。
商品名 | 特長 | 対象年齢 |
---|---|---|
ことばタッチペンえほん | 語彙力や発語のサポート | 2歳~ |
うたって学べる!おんがく絵本 | 音楽を聴きながら遊べる | 3歳~ |
感覚遊びグッズ
感覚遊びグッズは、お子さまの五感を刺激することに特化したアイテムです。
自閉症のお子さまは、感覚の偏りを感じやすい特徴があるため、絵本をめくる前後に感覚遊びを取り入れることで気持ちが落ち着き、読み時間がより快適になります。
手で触って心地よい感触のボール、ぐにゃぐにゃした粘土、カラフルなブロックなど、さまざまな種類があります。
お気に入りの感覚遊びグッズを見つけて、絵本タイムの合間に活用するのもおすすめです。
自閉症の子と絵本をめくる時間がもたらす成長

ここまで自閉症の子どもと絵本をめくる楽しさや工夫についてご紹介してきました。
絵本を一緒にめくる時間は、親子の絆を深める大切なコミュニケーションの機会となります。
自閉症の子どもは言葉や気持ちを伝えることが苦手な場面も多いですが、絵本を通じて感情や好奇心を表現できるようになることも少なくありません。
また、ページを自分でめくる動作を重ねることが集中力のアップや手先の発達にもつながります。
毎日少しずつでも絵本を読む習慣を続けていくと、子どもの世界や可能性がぐんと広がっていくはずです。
無理なく楽しく、子どものペースに合わせて絵本の時間を取り入れてみてください。
この記事が、ご家庭での読み聞かせや絵本選びの参考になれば幸いです。